

甘煮と書いて「うまに」と読みます。甘い(あまい)は、甘い(うまい)。「うまい」の語源はあまいからきているのです。そんなわけで、甘辛で濃い味付けです。これがお口に合うかどうかで、弁松の弁当の好き嫌いが分かれますが、懐かしい味がするようです。

まだ夜が明けないうち、玉子焼の作業から弁松の一日が始まります。最初にその日に使う玉子焼を焼くのです。今では機械で焼いたものや、前日以前に焼いたものを使用している弁当が多いようですが、弁松では未だに手焼きでがんばっています。一本一本真剣勝負で焼いている玉子焼は、だしをきかせたしっかりとしたお味です。

弁松の弁当に必ず入っている、しょうがと昆布を辛口に煮た佃煮風のものです。甘い味付けが多い中で、ピリッとアクセントになっています。午前中に弁松の店の前を通ると、この辛煮を煮ているにおいがほのかに漂ってきます。きざんで御飯に混ぜてもおいしいです。ちょっとよそでは見かけない商品です。

『雪と見る笹折詰の弁当は月の玉子や花のさくら煮』江戸百人一首にも詠われた弁松の逸品です。じっくり煮込んで桜色になったタコに、上質の葛粉である吉野葛(よしのくず)を使ったあんをからめます。タコなのに柔らかくてかみ切れるため、ご年配の方にも大好評です。手間隙かけて作っていますので、本当に食べたい方だけに召し上がっていただきたいのです。

弁松で使用している魚は主にメカジキです。剣状の長いツノを持っていて、大型のサメやクジラでさえ一刺ししてしまう海の世界の暴れん坊です。弁松では、メカジキの中でも最低100キロ以上の脂の乗った固体の身を仕入れ、仕込みから調理まで職人が熟練の技で丁寧に扱っています。釣り上げる時に、漁船の人が足を貫かれたりと凶暴な魚ですが、甘辛のたれで照焼きにしたメカジキのお味は抜群です。

弁松名物の一つ信田巻。見た目はいなり寿司ですが、ハスやしいたけ、海老を刻んだものが入っていてひと口頬ばると、たっぷりの煮汁がしたたります。歌舞伎にも登場する「信田の森のキツネ」の人気にあやかり、キツネの好物の油揚げを使った料理を信田と呼ぶようになりました。キツネもうっかりだまされる、弁松のいなり寿司です。

いつも折箱の端っこに鎮座しています。弁松=甘いというイメージに貢献しているおかずです。そもそも、きんとんはおせち料理でもお馴染みで、「金団」と書いて金運・財運を意味しています。弁松は豆きんとんなので、「まめに働いて財を成す」という意味になります。甘い煮物や玉子焼を食べた後に、さらに弁松スイーツ豆きんとんをお楽しみください。

お祝いの席に欠かせないお赤飯。きれいなピンク色がおめでたさを演出します。赤飯というのは、小豆の入ったお強(おこわ)のことです。お強とは、米を蒸したもののこと、「こわい」という昔の「かたい」の言い方から由来しているのです。なので、普通のご飯よりは堅物なんです。「ちょっと固い」というお客様からのご感想が来るのはこわいのですが、普通のご飯よりは堅物なのです。